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プロジェクションマッピングとは
プロジェクションマッピングとは、実物<リアル>と映像<バーチャル>をシンクロさせる映像手法です。その両者の融合が生み出す魅力的な世界観は、いま世界中で注目を集めています。
プロジェクションマッピングの大きな特徴は、テレビモニターや映画のようにプロジェクターから映像をスクリーンなどの平面に単純投映するのとは異なり、建築や家具などの立体物、または凹凸のある面に投映するという部分にあります。
その際、映像等の素材にはスクリーンとなる対象物の凹凸に合わせたデザインや、立体情報・表面情報を持たせ、投射の際にぴたりと重なり合うように調整します。
すると、その映像の動きや変化で、対象物が動いたり、変形したり、または自ら光を放っているかのように感じさせることのできる、幻想的で錯視的な映像表現です。
なおLEDパネルなども似たような映像表現の手法として活用されていますが、プロジェクションマッピングの場合は既存の建築物など投映対象に手を加える必要がなく、投映が終わればそく原状復帰できるのも大きな特徴で、歴史的建造物などの演出をすることに適しています。
プロジェクションマッピングの「マッピング」とは
プロジェクションマッピングは、英語ではProjection Mapping と表記され、P.M.と略されることがあります。なお海外ではプロジェクションマッピングの他に、ビデオマッピング/Video Mapping(略:V.M.)やビジュアルマッピング/Visual Mapping(略:V.M.)、3Dマッピング、3Dプロジェクションマッピング等の名称で呼ばれていることもあります。
これらの言葉で使われる「マッピング」は”地図を作る” からきている派生語で ”位置付けを割り当てること” という意味を含んでおり、プロジェクションマッピングにおいては投映対象の表層に映像素材を配し貼り合わせる事を意味します。

専用ソフトでマッピングしている様子
プロジェクションマッピングで対象物が立体的に見える仕組み
人が物体や風景を見たとき、平面なのか立体なのかどれぐらいの奥行きなのかといった情報は左右の目でみて認識します。
その際、陰影やパース(遠近感)、ピント具合といった情報からも立体物の形状を判断しているのですが、プロジェクションマッピングでは、まさにこうした陰影とパースを使って立体感や空間感を演出しています。
![]() パースによる奥行きの表現 |
![]() 陰影による立体感 |
プロジェクションマッピングでは投映対象が持つデザインや凹凸に対し、映像によって設計した形や色、陰影を与えます。
それにより、見る人の目に錯覚をおこし、対象がより立体的に見えたり、そしてあるときは 全く別の表情が浮かび上がり、更には動かないはずのモノが本当に動いているかの様なリアルな立体感、空間感を表現することができるのです。
プロジェクションマッピングのもつ魅力
プロジェクションマッピングがこれほどまで世界中の人々を魅了し続けているのは、単純に珍しい表現という以上に、楽しく夢のある表現であるという点にあります。
眼前に実在する物や建築や、現実ではあり得ないファンタジックな動きや変化を出して、多くの驚きと感動を与えることができます。
さらに最近では、プロジェクションマッピングされた投映物に触れると、センサーがそれに反応して映像が動き、さらにその反応を利用してゲームを楽しめるなど、センサーやプログラミングなどの最新技術を駆使した参加型のインタラクティブなコンテンツも続々登場しています。
また、プロジェクションマッピングで何もない部屋に仮想空間を作ることでVRゴーグルを使わなくても複数人同時に非現実的な世界での空間体験ができるアトラクションも話題です。
そのような大がかりな展示やイベントだけでなく、レストランにプロジェクションマッピングを常設し、お皿やテーブルにお食事をより楽しめる仕掛けを施したり、医療の現場でもプロジェクションマッピングを応用して、体組織の血流情報等を直接臓器に投影するリアルタイム手術ガイドシステムも登場しました。
アイデア次第でプロジェクションマッピングの可能性は広がり続けているのです。
このようにプロジェクションマッピングは単に奇を衒ったモノではなく、その時代の最新技術を取り込みながら創造的で、新鮮な表現や感動を生み出し続けています。このことはプロジェクションマッピングだけではなく、クリエイティブな意識としても、とても重要です。
プロジェクションマッピングのフィールド
プロジェクションマッピング活用の場はアイデア次第で無限に広がっています。
- アートとして
- ビジネスやプロモーションに
- 地域活性、地方創生、インバウンド誘致の手段として
- 景観を崩さない道路標識として
- 舞台やライブなど、エンターテイメントとして
- 様々な空間や環境の動きある演出として
- 医療、教育、福祉の現場で
- スポーツの斬新で効果的なトレーニングに
プロジェクションマッピングの歴史
近年ますます注目を集めている「プロジェクションマッピング」という映像表現ですが、日本においては、2012年9月にJR東京駅の丸の内駅舎で行われた大規模な企画で一気に市民権を得ました。

2012年東京駅プロジェクションマッピング
さらに、今では世界最大級にまで成長したプロジェクションマッピング国際大会「1minute Projection Mapping Competition」もこの年に開かれるなど、国内でのマッピング熱が加速していきました。
プロジェクションマッピングのはじまり
プロジェクションマッピングは最新技術と謳われることもありますが、実はベースにある考え方や手法は古くから様々な場所で行われています。
有名な例えではアメリカのディズニーランドで1969年8月にオープンしたアトラクション「ホーンテッドマンション」に出てくる、不気味にしゃべる胸像の仕組みにはプロジェクションマッピングの技術が使用されています。1983年にオープンした東京ディズニーランドにも当初からあるので目にした方も多いのではないでしょうか。
プロジェクター自体、30年以上前から学校の授業や企業の会議などでもよく使用されており、比較的幅広い世代になじみ深い機器であるといえますが、さらにはスライドプロジェクターや幻灯機と呼ばれるような初期の映写機でもさまざまな表現が試みられていました。
それが近代に入り、パソコンと接続され、その画面をより自由に壁面に投影調整できるようになってくると、それを手にしたクリエイター達は、プロジェクターを使った新たな表現を追求し始めるようになります。
その流れの中から15年以上前よりプロジェクションマッピングによる映像表現が自然発生的に生まれてきたのです。
特に舞台やイベント、ビデオアートやインスタレーションといわれる表現の世界では、早くからプロジェクターによる映像投映を活用した表現が取り込まれ、メディアアートとしても試行錯誤が行われてきました。
当時、まだ「プロジェクションマッピング」という言葉はありませんでしたが、今に置き換えると同じ手法であったものがいくつもあります。

MV演出 / 松室政哉
では今、なぜこれほど注目を集めるようになったのか? それは機材や映像技術の発達 による所が大きく関わっています。
特に高輝度のプロジェクターがクリエイターの手に届くようになり、ヨーロッパの歴史的建造物への大規模なプロジェクションが試みられ始めると、それらの不思議な立体感や作品の芸術性が大きなインパクトを与えました。
また、インターネットが普及してきた背景もあり、プロジェクションマッピングという技術は2005年にサービス開始となったYouTubeなど動画配信サービスの流行に乗り、世界中に拡散され急速に話題を集め初めます。
近年の日本でも、プロジェクションマッピングは各種メディアで取り上げられることも多く、その認知度も高まってきました。またイベントやアミューズメントパーク等でもイルミネーションなど、光の演出と並んで頻繁に取り入れられるようになったことで、幅広い世代から親しまれるようになったのです。
プロジェクションマッピング黎明期に話題となった世界の作品事例
Madame Leota Montage(ホーンテッドマンション)/Disney World
先述したホーンテッドマンションにおけるプロジェクションマッピングによる演出例です。
こちらは1971年10月1日に開園したフロリダにあるディズニーワールドリゾート/マジックキングダムにあるホーンテッドマンションの映像となります。
建物に投映され始めたころのプロジェクションマッピング作品事例
AntiVJ – Crea Composite: Nuit Blanche Bruxelles
2008年10月4日、ベルギー・ブリュッセルのMont des Artsで行われた、イギリスのブリストルに拠点を置くクリエイター 集団「AntiVJ」による、パフォーマンス。
当時の作品は、まだプロジェクターの輝度も低く、コントラストを出すために白黒の陰影で表現された映像が用いられました。この見た人に不思議な錯覚を引き起こすこの斬新な表現は大変話題となり多くの注目を浴びました。
NuFormer 3D Video Mapping Projections on buildings
NuFormerは、建物へのプロジェクションマッピングという新しい表現方法が始まろうとしていた時代から現代に至るまで、常に前線で活躍し続けている制作会社です。
この作品は2009年に印象的な形の建物へ映像を投映し、新しい表現方法を広くアピールすべく発表されました。
企業のプロモーションで活用され話題となったプロジェクションマッピング作品事例
ラルフ・ローレン『Ralph Lauren 4D』
2010年、イギリスのファッションブランド、ラルフ・ローレンがロンドンのニューボンドストリートにある自社の建物に、デジタルイノベーション10周年を記念してアート、ファッション、テクノロジーの究極の融合をプロジェクションマッピングで表現。
CGだけでなく実写のモデルのウォーキングを建物の形に合わせて撮影し投映されたプロジェクションマッピング作品は、斬新な企業のPR方法として世界にインパクトを与えました。
独自の発想が大きな話題を呼んだプロジェクションマッピング作品事例
New balance sneaker Projection mapping
2010年に公開された韓国の若いクリエイターが作って話題になった、New balanceのスニーカーにプロジェクションマッピングした作品。普段見慣れたスニーカーが自ら発光しているかのように、次々にカラフルなデザインへと姿を変えていきます。
この映像はネット上で拡散され、多くの人の関心を集めました。
The Icebook
「The Icebook」は2011年に発表された、イギリスを拠点に活動するDavy and Kristin McGuireによる作品です。
立体的に組み上げた切り絵をスクリーンに映像を投影、世界初となるプロジェクションマッピングによるポップアップブック(仕掛け絵本)でもあります。彼らの美しく耽美で独特な世界観とプロジェクションマッピングという技術の融合は世界中から高く評価され、今日もパイオニアとして数々の新しい作品を生み出しています。
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BOX
2013年に公開された、Bot & Dollyによる作品。
ボードを取り付けたロボットアームの動きをプログラミングで制御、同時にボードの動きにシンクロさせたプロジェクションマッピングの映像を投影し、デジタルによる立体空間を表現しています。
ロボット工学、プロジェクションマッピング、プログラミングなど、ストーリー性のある映像アートと最新のテクノロジーを融合させた複数の技術の集大成は、見た人を驚かせただけでなく、プロジェクションマッピングを更なる高みへと押し上げました。
プロジェクションマッピング製作に必要な要素
プロジェクションマッピング製作に必要な要素として、大きく「映像コンテンツ製作」、「機材・技術」、「対象物・素材」の3つが挙げられます。
プロジェクションマッピングで使用されるソフト
プロジェクションマッピング用の映像製作で良く使用されるソフトをご紹介します。
なお、プロジェクションマッピング用の映像製作では、必ずこのソフトを使用しなければいけないというものはありません。作り手が目指す内容によって、使用するソフトの選択肢がたくさんあることが特徴です。また、これらソフトを複数併用して使用することも多々あります。
また、下記でご紹介したソフトは無料のものから高価な物まで幅広くあります。ですが作品の完成度は値段によって左右されるわけではありません。あくまで、どのようなものを作りたいか、どう表現したいかを前提に、それが表現可能なソフトを選択します。